Homura Tomoi Ballet Company. "Close-up"
St.Petersburg on my mind. ルジマートフ  
バレエ芸術 法村 圭緒 Yoshio Homura
  サンクトペテルブルグ ゲンナジ−・セリュッツキーに師事
 
  ペテルブルグでの夢
マリインスキ−劇場で踊って
  法村 圭緒
はじめてワガノワ・バレエアカデミーの扉を開いたのは私がまだ14歳の時でした。
それ以来、毎年のように訪問を繰り返し、1993年より恩師ゲンナジー・セリュッキーのもとで、バレエの「お勉強」が始まったのです。  
いちばんの想い出といえば、1995年1月3日、マリインスキー劇場で「くるみ割り人形」の主役を踊ったことです。この時は本番の2ヶ月前、左足の膝に力が全く入らなくなるという変な病気になり、一時は「引退」を考えたことさえありましたが、休養とリハビリを重ね、ようやく1ヶ月前のリハーサルに間にあった状態でのステージでした。とてつもない緊張感におそわれながら踊った聖地マリインスキー劇場のステージを忘れることはないでしょうね。 ワガノワ賞コンクールでの受賞も、私にとっては忘れられない出来ごとのひとつです。残念だったのは、審査の会場がマリインスキーではなくマールイ劇場の舞台だったことです。マールイ劇場は舞台の傾斜がきつく、その傾斜はまるで断崖絶壁のようでした。もしマリインスキー劇場で審査が行われていたら、私が1位 だったかもしれません。(笑)
そして4年後、セリュッツキー氏の推薦とキーロフバレエ団芸術監督ワジーエフ氏の決定により、1999年4月13日、マリインスキー劇場キーロフバレエ団公演「ドン・キホーテ」の主役バジルという大役が巡ってきました。パートナーのエリヴィラ・タラソワは、キーロフのベテランで固定ファンも多い素晴らしいダンサーで、私自身、留学中にも彼女のすばらしい舞台を幾度となく観たことがありました。 4月2日から始まったリハーサルでは、さすがベテランという感じで、僕が逆にサポートされっぱなしだったような気がします。リハーサル期間中は、イメージ通 りに上手くいかないこともあり、「日本に帰りてえなー、早くアルマゲドンこねえかなー」なんてバカなことを考えながらホテルへ帰る日もありました。でも、なぜかイライラしたりしなかったのは、毎日白身魚のフライばかり食べていたからだと思います。
  ついに当日。4時の楽屋入りをモスクワTBSのビデオカメラに迎えられました。舞台にはすでに1幕のデコレーションが整然と飾られていました。留学中、数えきれないくらい通 い詰めたマリインスキー劇場。その舞台で今、主役を踊るという興奮と喜びを胸に、誰もいない飾られたバルセロナの広場をしばらく散歩していました。  
定刻7時開演。前奏が鳴り出せばもう緊張の嵐でした。この日の指揮者はヴィクトル・フェドートフ。彼の指揮で主役を踊るのは僕の夢の一つでした。はじめにタラソワが登場すると大きな拍手。今日もファンがたくさんきているようだ。気合いを入れて僕も登場!・・・残念ながら拍手は少なかったけど、キーロフの仲間たちに迎えられて、気分良く物語が始まりました。「ドン・キホーテ」は第1幕が最難関といわれており、僕自身も緊張で何がなんだかわからないうちに幕が下りていました。  
少し落ち着いて2幕。舞台上に座り、目の前で見たジプシーの踊りはまさに圧巻でした。このときに初めて、このすばらしい舞台の中に自分がいるという幸せを実感しました。 そして、1番練習量の足りなかった3幕。しかし、このあたりでようやくお客様の心をつかめた気がしました。今回、1度も通 し稽古がなかったため、本番になって「ああ、こんな踊りあった」なんて思うこともありました。
  あっという間にもう4幕。後はいつものようにやるだけ。
もう緊張はしていませんでした。たぶん、本番前にセリュッツキーにもらった3ルーブルの飲み薬が効いてきたのでしょう。お客様の拍手をパワーに変えながら、最後まで踊ることができました。
カーテンコールの時、アーティスト席にはルジマトフの姿もありました。
この日、ワジーエフが出張のため代理として彼が見に来ていたのです。幕が下りると、舞台にきてくれました。
 
 
 
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